学生と地域の交流可能性を有する空き地空間の実態に関する研究

はじめに

 お久しぶりです。自分としてはあっという間の一年で、就職・卒業研究など様々なことがあり、気づいたらもう三月になっています。あと少しでこの長岡造形大学とも長岡と別れることになり寂しさ・悲しさがこみ上げています。



自分は来年度から長岡を離れ、北海道の札幌に行ってまいります。雪国からさらに上位互換の雪国へといった形ですが、海の幸や広大な自然を堪能してきます。



冒頭から話が脱線してしまいましたが、今回のブログでは卒業研究で取り組んだ学生が活用できる空き地の調査マップを卒業研究を主軸にして書いていこうかと思います。お時間あればお付き合いのほうよろしくお願いします。



卒業研究タイトル

学生と地域の交流可能性を有する空き地空間の実態に関する研究-長岡造形大学生の作品を販売するアンテナショップを事例として-







研究の背景・目的

背景の背景として、今回卒業研究にあたるうえで自分のやりたかったことを福本先生、ゼミの仲間等の助力を頂いて形にしていきました。自分のやりたかったことは空き地について何かをしたいという漠然としたものです。それがどのようなものになったのか以下から見ていただけたらと思います。



現在、空き地・空き家等の空き空間は年々増加し、周辺環境に悪影響を与えています。しかし、自分は高校時代にいくつかの「空き空間の活用についてのコンペティション」に取り組む中で、空き空間を単なる「空き地」にするのではなく、周辺環境や街に溶け込むような活用方法が検討可能であると感じ、空き空間が街の魅力を引き出す可能性に興味を持ちました。



高校時代にいくつかの空き地利活用の提案をしましたが、特に学生という立場であれば、様々なやりたいことがあったとしても、実際に空き地を活用するには非常に敷居が高いです。例えば、使用用途に沿った空き空間の選定、所有者・管理者の連絡先の入手、所有者・管理者への連絡・説明・交渉、実使用の際の注意点、使用許可に関わる手続きや安全管理、資金等の様々な問題が発生し、非常に困難であることが想定されます。



しかし、このまま放置しても問題が改善することはないため、活用に向けた空き地の管理・実態把握に関する基礎的な研究や活用可能性としての取り組みの実践が希求されていると考えます。



 そこで、本研究は「学生の空き地利活用の可能性」に着目し、長岡造形大学周辺エリアにおける空き地の実態を把握し、それらの空き地においてどのような学生の利活用の可能性が反映されうるのか試行することを目的とし、成果の一部を示すことで土地の所有者や学生の「空き空間の利活用」に関する興味・関心を引き出す一助になることを目指します。



仮説について

本研究における研究仮説を以下のように設定しました。



長岡造形大学生が利活用可能な空き地は管理がされていて接道条件が良い空間に限られるのではないか。なぜならば、学生は管理しなければ使えない土地には面倒くさいと感じ利用したいと思わないため。



研究の流れについて

下記のような流れで研究を進めていきました。
  • 1.長岡造形大学周辺エリアにおける空き地の実態調査
  • 2.空き地マップ(空き地の分類含む)の制作
  • 3.学生の活用可能性実態調査(アンテナショッププロジェクトの内容に基づいて)
  • 4.学生の視点に基づく、長岡造形大学周辺エリアにおける空き地の活用可能性の検討
  • 5.活用可能性の高い空き地の空間デザイン

対象地域

本研究における対象地域は「長岡造形大学の周辺エリア」である9区画、「蓮潟」「宮関」「古正寺」「荻野」「下柳」「鉄工町」「寺島」「千秋」「東堺町」を対象として空き地の実態把握調査を実施しました。



空き地の実態把握調査(空き地マップ)





GoogleMAPおよびZENRIN社住宅地図を用いて、予め空き地と考えられる空間を抽出しておき、実際に現地を訪れ、写真の撮影、看板の有無、外形が地図と一致しているかどうか確認調査を実施し、必要に応じて地図上の修正しました。



空き地の定義

本研究における空き地の定義は、「建物がなく、農耕がなされていない空間」を空き地と捉えて調査を実施しました。但し、上記定義以外に除外する空間として、特定の個人あるいは団体が所有している駐車場は除外しました。



なお、利活用の判断については、「長岡造形大学生の作品を販売するアンテナショッププロジェクト(研究代表者:福本塁助教)」に出展する可能性がある店舗とその内容を「学生の空き空間活用ニーズ」として捉え判断基準として用いました。



空き地実態調査結果

2020年11月1日~2020年11月24日にかけて、長岡造形大学周辺エリアの空き地実態調査を実施した結果を示した地図として、空き地の実態把握調査(空き地マップ)を、各地区の空き地区画総数、及び総数に対する学生が活用可能な空き地の区画数を活用可能割合として算出したものを以下の表に示します。



長岡造形大生も多く居住するエリアである「蓮潟」「宮関」「下柳」「古正寺」は空き地区画総数も多いですが、活用可能な空き地区画数も多い結果となりました。それに対して、「鉄工町」「千秋」「東堺町」は空き地が存在しない地区となっていました。これは、鉄工町が工業系用途地域であり、千秋と東境町は商業系用途地域であるためと考えられます。







学生の活用可能性実態調査結果

 同プロジェクト「長岡造形大学生の作品を販売するアンテナショッププロジェクト(研究代表者:福本塁助教)」の中にあるサブプロジェクト「怪しいお店をつくりたい」については、「怪しさを演出できること」が最優先事項であり、敢えて「大通りに面して光のあたる空間より」管理不十分な「荒れていて暗めの空間が演出可能な空き地」の方が出店先として望ましいとの証言が得られている等多様なプロジェクトが存在していることが確認された。

考察

本研究における仮説「長岡造形大学生が利活用可能な空き地は管理がされていて接道条件が良い空間に限られるのではないか。なぜならば、学生は管理しなければ使えない土地には面倒くさいと感じ利用したいと思わないため。」の検証を行います。



まず、学生が主宰するプロジェクトの多くは管理がされていて接道条件が良い空間を好ましいと捉えているが、「怪しさの演出を最優先できる」ことを目的に敢えて「管理されていない土地」が好ましいと回答するプロジェクトが実在することを確認しました。そのため、本研究の仮説は必ずしも支持されなかったと判断されます。



結論

空き空間の活用は「管理され、接道条件が良い」空間としての需要が高いことが第一需要として想定されやすいですが、大地の芸術祭等のアートイベントにも見られるように「その空間の状態を素材として見る活用方針」のあり方がミクロなスケールの空き空間活用にも適用可能性があるのではないかと結論づけました。



提案

こちらが、本研究の調査を通じて抽出された学生のプロジェクトが長岡造形大学周辺エリアで社会実装されることを想定したCGパースになります。このようなCGパースが実在することで、学生と空き地の所有者とのつながりを想起させ、学生が空き地を利用する敷居を下げ、或いは土地所有者が学生に空き地利用を許可する取り組みを促すことにつながり、学生と地域の交流を促す一助となれば幸いであると考えます。



卒業研究を通して

今回の卒業研究を通して、まず、空き地について何かしたいということを形にしてやりきることができ、とてもうれしく感じています。自分のやりたかったことが、空き地マップのように形になり、四年間の集大成としてふさわしいもが出来上がったと思います。



これから就職し多くの困難があると思いますが、この研究を思い出し、頑張っていきたいと思います。今回学生が活用可能かどうかの参考として挙げさせていただいたアンテナショッププロジェクトについては自分も参加させて頂き、長岡造形大学には本当に多彩な人材が多くいるのだと感じました。



作品はもちろん、プロジェクトを成功させるために様々なことを模索し、ミーティングにて会議する姿にとても感動しました。それらの学生ごとのプロジェクトについても、同福本研究室のサイトの検索に「アンテナショップ」と検索すれば多くの素晴らしい作品・活動を見ることができるため是非見に行ってください。



最後に自分の漠然としたやりたいことを形にして頂くところから、論文作成に至るまで多くの助言を頂いた福本先生、自分の研究について話し合いをして頂いた研究室の皆様、そして四年間この長岡造形大学に通わせてくれ、温かい目で見守ってくれた両親に感謝を述べ、終わらせていただきます。本当にありがとうございました。