卒業研究とは? – 卒業研究の意味・位置づけを考える

卒業研究の意味

少しだけ堅い話になってしまいますが、「卒業研究」の意味・位置づけと「研究室配属(研究室選び)」について、福本の個人的な考えをみなさんにお伝えさせて頂きます。


社会人と学生の違い

大学卒業後に就職が決まっている場合、卒業年度の3月31日までは「学生」ですが、その翌日の4月1日からは「社会人」となります。


たった1日しか変わらないので、身体的な変化はあまりないはずですが、「学生」ではなく「社会人」の立場になります。


卒業研究は学生にとって「社会人」と「学生」の境界に位置づけられた関門となっています。


ここで、「社会人」と「学生」の違いについて少し考えてみましょう。


「学生」は大学に学費を収めて専門分野を深める「学ぶ立場」となりますが、「社会人」は他者や社会に役立つ対価として顧客から報酬を頂く「貢献する立場」となります。


特に顧客にとっては「報酬を払ってでも解決したい問題」となるため、「社会人」の立場で取り組む仕事内容は必然的に「難しい内容や手間のかかる内容」であることが多くなります。


すると、これまでは「進め方がわからない」「どのように取り組めばよいかわからない」といった際に「初めてやるのだからわからなくて当然だし、順を追って取り組めば大丈夫」と懇切丁寧にガイドされていたものが、「報酬をもらうのだから、自ら解決策を模索・実践する姿勢を持つのが当たり前」、もっと酷い場合は「こんなことも知らないのか」といった反応に変わってしまいます。


このような状況の変化はみなさんにとっては「そんなこと急に言われてもいきなりできないよ・・・」と「理不尽な問題」に映るはずです。


そして、そのように感じることは正しいです。


このような「社会人」と「学生」の違いとして発生する「理不尽な問題から守られなくなること」に対する準備をする必要があり、そのための準備に「卒業研究」が役に立つと考えています。




理不尽な問題の乗り越え方

なぜ、「卒業研究」が「理不尽な問題から守られなくなること」に対する準備になるのか?と疑問に思うと思います。


ここで「卒業研究」について考えてみましょう。


「卒業研究」は大学生活4年間の集大成として取り組むものになります。


何に取り組むかと言えば、答えがわかっていない社会の困りごとに対して、自分で「問い」を設定し、その「答え」を出し、社会がより良い状況になる提案に結びつける取り組みとなります。


指導教員の立場からは、卒業研究を通じて「自分で問いを持ち答えを出す力」を学生に身に着けてほしいと考えています。


この「自分で問いを持ち答えを出す力」があれば、「報酬を払ってでも解決したい問題」に対して解決策を模索・実践する姿勢を持ち、「理不尽な問題」を乗り越えていけると考えているわけです。

自分で問いを持ち答えを出す力をつけるには・・・?

さて言うは易しですが、「自分で問いを持ち答えを出す力」はどのように身につくのでしょうか。


世の中に存在するあらゆる物事を学んでおくことのような方法は現実的ではありません。


福本の体験談に基づいた考えとなりますが、


ある一時期において多くの時間を費やして1つの物事を考え抜いた経験が「自分で問いを持ち答えを出す力」の1歩目になると考えています。

研究室配属の意味

ここまでの話を整理すると、

  • 「社会人」と「学生」の違いは「理不尽な問題から守られなくなること」
  • その準備として「自分で問いを持ち答えを出す力」が必要
  • そのためにある一時期において多くの時間を費やして1つの物事を考え抜いた経験が必要

となります。


上記を踏まえて研究室配属の意味を考えると・・・


「1つの物事・問いを考え抜く環境をつくること」になります。


環境には「機材」「空間」といった「設備」といった視点のほかに「構想」「調査」「設計」「制作」等の各取り組み工程において、指導教員や様々な人と議論していく「専門性を深める仕組み」が重要になります。


どんな人たちと議論して専門性を深めていきたいのか?といった視点で研究室配属を考えると少しだけ選びやすくなるのではないでしょうか。

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この記事を書いた人

「コミュニティデザイン」、「都市防災・防災まちづくり」、「教育方法・教材開発」の分野における研究や実社会への適用を行っています。 特に、「災害から地域が自律的に復旧する仕組み」の実現に力を入れて取り組んでいます。

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