企業による共助「業助」

災害に備えるために企業がすべきこと

本研究プロジェクトに興味をお持ち頂き誠にありがとうございます。 企業による共助、「業助」という言葉は、まだお聞きになったことがない方が多いかもしれません。 実は、私が提唱した新しい概念で、この概念を核とする一連の成果で博士号の学位を取得しました。

そして、これからする話は全てロータリーが始まりです。というのも私は、かつてのローターアクター、神奈川県の相模原ローターアクトクラブ出身者なのです。 本日は、皆さまのプログラムの成果の小さな芽生えを聞く、という認識でお聞きいただければ、と思います。  私は、ローターアクター時代にこれからの世の中は、「防災」が世界共通の課題になってくるのではないか、と考え活動していました。 2011年2月、ニュージーランドのクライストチャーチで地震があり、復興支援策、募金の集め方、寄付の方法などをみんなで共有して取り組んでいたところ、3月に東日本大震災が発生しました。ロータリアンの皆さまに支援をいただきながら、私は熱意と行動力だけで、現地の支援活動に取り組みました(本誌11年7月号43~44ページ)。 あの3月からすでに10年が経過しようとしています。この間、研究者になった自分が取り組んできたことは二つです。一つは地域の自律的な復旧はどうすれば果たせるのか、地域に何が埋め込まれていれば、災害時に人々が助け合う仕組みが発動・発現するのか? この問いに答えられるよう学術的な研究を進めています。もう一つは、世代を超えて防災について「楽しく」話し合える場づくり、これらに取り組んできました。 
自助・共助・公助
日本人が災害に対して取り組むスタンス

東日本大震災では、地震の後、大きな津波が襲来しました。死者・行方不明者など合わせて2万人を超える大きな被害を生み出し、家屋の全壊エリアも出ました。日本では、こうした大規模な自然災害が相次いで発生しています。従って、社会的な課題の一つとして、被災地域が受ける被害をいかに減らすのか、ということが挙げられます。同時に、被災地域が自律的に被害を回復する構造の解明と社会実装が、必要になってくるわけです。 広域災害の被害に対する復旧には、行政だけではなく、住民、企業、団体の各主体が、自ら能動的に取り組む必要があります。そうした取り組みが集積し、時間の経過と共に地域の復興につながっていくと考えています。 行政任せではなく、あくまでも「自分たちの地域は自分たちで守る」という発想で能動的に被害を回復する。そのような町、都市、地域とは一体どのようなものなのか、という観点で研究に取り組む必要があると考えました。 防災を推進する上で「自助・共助・公助」とい日本人が災害に対して取り組むスタンス「自助・共助・公助」う三つの重要な概念があります。日本人が災害に対して取り組む基本的なスタンスとして知られています。自分で自分を助ける行動としての「自助」、お互いが助け合う行動としての「共助」、行政からの復旧支援や救済が「公助」です。これらの概念は、米沢藩主・上杉鷹ようざん山(1751~1822)の言葉「三助の精神」が語源といわれています。鷹山が提唱した「三助」とは「自助・互助・扶助」という表現です。自分のことは自分で、それができなければお互い助け合い、それも無理であれば、藩から救済をしましょう、ということです。 では今、「自助・共助・公助」はいったい誰が実施するのか、というのを考えてみてください。 「自助」は分かりやすいですよね。自分で助ける自己責任。「公助」は社会、自治体、行政、国というものが入ってくるので、社会の責任。しかし「共助」というのは極めて主体が広く、「誰それの責任」となかなか言えない状況です。学術的にも、共助の取り組むべき主体というのはいったい誰なのかが、少し議論として煮詰まっていない状況でした。私はこの「共助」に注目し、研究を始めました。